静岡県三島市の藤岡武雄先生から第12歌集を頂戴した。有難うございます。
1926年山口県に生まれて現在97歳、作歌83年、渾身の第12歌集である。
堂堂たる作品の詰まった歌集のカバー装画は、1940年横山大観「海に因む十題 海調べ四題 春」より、間村俊一氏の装幀による。
夕やけの空にいくつも魚泳ぐその底に立つ吾は何者
藤岡先生の自選5首を、帯より引用して紹介しよう。
平凡な一日と云へど現はれしひばりにのりて天空の夢
亡き父の大島紬の羽織り出し身丈のあへば父と歩むも
離れ住む孫とは二年逢へずして隣の犬とほほゑみ交はす
砲撃の刹那の映像 七十年前のわが身に迫りし実弾
立ちかへれ理性のもとにたちかへれロシアよプーチン人間プーチン
いくつかの振り仮名を省略した。魚(うを)、紬(つむぎ)、二年(ふたとせ)
仮名遣いは、旧仮名だ。
書名 歌集 天空の夢 てんくうのゆめ
著者 藤岡武雄
発行日 初版 2023年5月25日
発行 公益財団法人 角川文化振興財団
定価 本体2600円(税別)
略歴の一部 日本文学研究者、日本大学元教授、歌誌「あるご」主宰、
日本歌人クラブ元会長(1996年10月~2005年5月)
斎藤茂吉研究社として著書多数。
ぜひ、この歌集をお求めになってご覧ください。
*藤岡先生は「斎藤茂吉を語る会」前会長として、年に2回は開催会場の新宿まで
三島市よりおいでくださる。私はそこで先生にお目にかかるのだが、現役文学研
究者としてのお話は本当にご立派だ。ニコニコ優しい笑顔を拝見するとこちらも
元気が湧く。私は、斎藤茂吉の義父が明治時代に医師になり、現在の秩父市内で
初めて開院した「斎藤医院」の跡地を捜しているがいまだ見つけられない。紀一
院長は後に茂吉の義母となった女性と出会い、共に浅草へ出た。その後、大病院
を建て活躍したが、それを一生支え続けたのがこの義母であった。その生家には
現在も医院閉院の時に跡地から移し替えた植木が大切に育てられている。院長の
東北の実家の実父が書いた日記の写真の写しを藤岡先生から頂き、自分では昔の
筆書き文書の解読ができず、専門家に解読をお願いした。秩父市内の候補地の町
内の方々も医院跡地探しを応援してくださっているが、私はコロナ禍の現地へ行
くことは控えてきた。しかしその数年の間に誰もが年齢を重ねて過去のことはさ
らに遠のいてしまった。代が代わり、さらにわかりにくくなっていく。一つ成果
の上がったことは、秩父の医院開業の折のチラシを印刷した印刷所を見つけ、院
長とと親しかった方の子孫の方にお話が聞けていることだ。それでも、肝心な場
所の特定ができない。もう一度、集めた書籍類を読みなおし動き出さなくてはと
思う。実は昨日、その院長が亡くなった温泉へ行ってみたが更地になっていた。
今年は、この研究を優先していこう。
今日は、歌集『天空の夢』をじっくりと拝見させて頂こう。